【倒木の原因を解説】台風15号で見えた樹木管理の大切さ

樹病・害虫

どうもカントーです。

 

今月9日に上陸した台風15号が
建物の倒壊や、停電、断水などの被害をもたらしました。

自然災害の恐ろしさを改めて思い知らされます。

 

今回、停電の復旧が2週間以上かかってしまった原因の一つに、
倒木処理が挙げられています。

では、なぜ今回の台風では多くの木が倒れてしまったのでしょうか?

今回はその原因と、倒木処理の問題について解説していきます。

 

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台風15号で多くの樹木が倒れた理由とは?

今回の台風では電線に木が倒れ掛かり、
必死にチェーンソーで切っている復旧映像をよく見ました。

台風が来ると、毎回樹木が折れている映像が流れますが、
今回はいつもとは違う傾向が見られました。

 

そのいつもと違う傾向とは、倒れている樹種の違いです。

 

いつもの台風であれば、折れている樹木は
ケヤキやクスノキなどが多いのですが、
今回はスギが倒れていました。

これは今までの台風と何が違うのでしょうか?

 

ケヤキとクスノキが折れやすい理由

まず、例年の台風でよく被害をが起きやすい
ケヤキとクスノキが折れやすい理由を解説していきます。

 

ケヤキは本来とても硬い木材の樹種であり、
自然の中で枝折れすることは珍しいです。

では、なぜケヤキが折れるニュースをよく耳にするのかというと、
理由は大きく分けて二つあります。

 

一つ目の理由は、ケヤキの樹形が関係しています。

ケヤキの枝は上向きに成長しやすく、
竹ぼうきを逆さにした様な樹形になります。

つまり、V字の枝が多くなりやすい樹種です。

このV字の枝は、太くなると隣の枝と癒合し始めます。

癒合した部分はきれいにくっついたように見えますが、
組織的には完全に融合するわけではありません。

融合できない枝と枝の間は隙間もできやすい不完全な組織です。

台風などによる強い風が吹けば、
枝量や葉の量、風向きで枝の振動数が変わるので、
枝と枝が離れる運動になり、枝同士の癒合部分が剥がれてしまいます。

一度剥がれた場所は菌が入りやすくなってしまい、
また、風通しが悪くて菌が繁殖しやすい組織になってしまいます。

こうなると腐朽が促進され、折れやすくなってしまうのです。

 

もう一つ理由は、単純に植えられている本数が多いことです。

上述した通り、ケヤキは枝が上向きに伸びるので、
狭い場所にも植えられるために街路樹として多く植栽されてきました。

どこの町に行っても
「けやき坂」や「けやき通り」、「けやき公園」などがあるのは、
ケヤキが植栽用樹種として有用だった証です。

 

 

もう一種類、枝折れが多く報告されるクスノキですが、
この樹種はケヤキとは全く違う理由で枝が折れます。

 

まずは簡単に日本に上陸する台風の特徴を解説します。

台風は基本的に南の海上で発達し、
地上に上陸すると勢力を弱めます。

つまり、日本は南に行けば行くほど
強い台風に遭遇する確率が上がります。

また、日本は台風の発生時期と高気圧の関係で、
西側から上陸することが多いのも特徴です。

 

しかし、クスノキは枝が折れやすいのにも関わらず、
九州や四国に多く自生しています。

この矛盾を解説するには、クスノキの生理生態を知る必要があります。

 

樹木は当然ながら、体を構成するのにエネルギーや栄養が必要です。

特に風が吹いても倒れない、折れないような体にするには
相当な密度ある体を作らなくてはいけません。

風で枝が折れてしまえば、光合成するための葉をなくしてしまい、
更に病気に罹るリスクも上がってしまいます。

当たり前ですが、普通の樹木は枝が折れないような成長戦略を取ります。

 

しかし、クスノキは違います。

 

クスノキは枝が折れやすい代わりに、
枝の中に虫や菌に対する抵抗物質を作る方に
力を入れて進化してきました。

ちなみにタンスの中に樟脳という虫除け剤を入れますが、
あの薬剤の成分はクスノキから採ったものです。

また、暖かい地方に自生しているので、
成長量は多く、成長速度は速くなります。

つまり、成長量と速度に応じて、回復も早いのです。

 

他の樹種とは違う戦略を取ったクスノキは、
今では樹齢500年以上の木が
日本各地でたくさん見られる数少ない樹種になっています。

つまり、クスノキの枝が折れるのは当たり前であり、
それがクスノキの生き残り方なのです。

 

今回の台風でスギが倒れた理由とは

今回の台風15号では千葉で相当量のスギが倒れました。

スギが土砂崩れや表層崩壊以外で、
これだけ倒れるのは珍しい現象です。

今回、これだけ多くのスギが倒れてしまったのは、
品種と病気が深く関係しています。

 

千葉県のスギは「サンブスギ」という品種が多く使われています。

サンブスギとは千葉県の山武地方で
250年以上前から使われている林業用品種です。

この品種は普通のスギと比べて、以下の様な利点があります。

 

  1. 挿し木による繁殖が容易
  2. 成長が早い
  3. まっすぐ育つ
  4. 肥大成長が均等(年輪がきれいに成長する)
  5. 赤枯病に罹りにくい
  6. スギカミキリに強い

 

これらの特徴により、千葉では植林が進められ、
県内のスギ林面積の24%をサンブスギが占めています。

 

しかし、このサンブスギにはデメリットもあります。

 

この品種は、非赤枯性溝腐病という病気に
罹りやすいことが報告されています。

非赤枯性溝腐れ病とは、昭和35年に見つかった病気で、
キノコの仲間であるチャアナタケモドキが原因だといわれています。

この病気に感染すると、スギの樹皮は縦に溝状に凹み、
その中の腐朽が進行して溝がさらに深くなっていき、
最終的には枯死に至ります。

 

また、サンブスギは冠雪害や風害にも弱いことが知られています。

 

この溝腐病に罹りやすいことと風害に弱いことが重なり、
今回の台風では大きな被害に繋がってしまいました。

樹病の恐ろしさを感じます。

しかし、この事態は予測できなかったのでしょうか?

 

今回の倒木被害は防げなかったのか

まずは非赤枯性溝腐病の防除方法について説明します。

この溝腐病はチャアナタケモドキという菌類が侵入することで発病するので、
まずはこのチャアナタケモドキからスギを守ることが大切です。

このチャアナタケモドキは、枝枯れした部分から
幹に侵入することが報告されています。

つまり、枝打ちという管理がしっかりされていることが大切です。

 

また、病原菌は枯れた樹木から増えていきます。

間伐したスギや、倒木してしまったスギを放置することで、
病原菌の発生源を作ってしまうことになるのです。

枯れたスギを林内に放置しないことが鉄則になります。

 

これらの枝打ちや倒木の処理は、
本来、林業管理によって防がれるべきものです。

しかし、林業従事者が少なく、
管理することが困難なのもまた事実です。

つまり、病気の発生もわかっていながら、
打つ手がなかったのが今回の結果です。

 

同じ災害を繰り返さないためには、
命や生活を最優先にした林産計画が大切になります。

例えば道路沿いや民家の近くは抵抗性品種を生産したり、
生産樹木の病気のチェックが必要です。

自治体も林業者も他人事にせず、
責任を持って取り組む必要があると思います。

 

また、今回の倒木を処理しないと、
病原床を林内に大量に作ってしまうことになります。

早い段階の処理が望まれます。

 

終わりに

今回はスギの倒木の話しでしたが、
実は他の樹種も、いつ今回のサンブスギのようになっても
おかしくありません。

例えば街路樹として植えられているソメイヨシノは、
近年病気が蔓延し、クビツヤアカカミキリという
天敵外来生物も確認されるようになりました。

大きな台風が来たとき、根こそぎ並木が倒木するということも
あり得なくはありません。

 

これらの災害は人命に直結することなので、
普段からの樹木診断、管理がいかに大切かが分かると思います。

しかしながら、日本ではないがしろにされているのが現状です。

 

日本に多く木が植えられたのは戦後復興期です。

そこから50年以上が経ち、公園も街路樹も林業樹種も樹齢が高くなってきて、
倒木リスクは年々上がっています。

 

現場には、適切な税金投入と、新たな技術導入が求められています。

 

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